みなさんこんにちは!
今回から、新シリーズ【やさしい美術史】が始まります!
このシリーズでは、『世界アート鑑賞図鑑』(スティーブン・ファージング、樺山紘一、東京書籍)を基本書として近代から現代にかけての芸術運動を紹介していきます。
さらに、後にそれぞれの芸術運動に対して、歴史的背景や哲学思想などを加味した考察を追加更新していく予定ですので、そちらも楽しみにお待ちください。
※本シリーズの内容は、アート情報サイトにも掲載予定です。
それでは早速始めましょう!
20世紀の美術における大きな転換点となったムーブメント『ダダ』!
始まりと思想
1914年に勃発した第一次世界大戦を機に、多くの芸術家や詩人がチューリッヒ(スイス)やニューヨーク(アメリカ)へ移住しました。
その中の一人である詩人トリスタン・ツァラは、移住先のチューリッヒで多くの芸術家と交流を深め、1916年にダダの始まりとされる『ムッシュー・アンチピリンの宣言』を発表しました。
その2年後に出された『ダダ宣言』では、「ダダ は俺たちの強烈さだ」という冒頭の一文に表されているようにダダのベースとなる思想を形作りました。
彼らは、人間が生み出した合理的な科学技術、機械文明の発達の1つの結果である戦争や従来の進歩史観(歴史を経るうちに世界は徐々に良くなっていくというヘーゲルの哲学思想)に嫌悪感を抱き、社会の中で多くの人が共有する既成概念や常識を破壊したり否定したりすることで、傷ついた人間性を取る戻すための新たな価値観の創造を試みました。理性や科学によって社会問題は解決されるという考えを崩そうとしたのです。
表現と美
そこで彼らは、芸術表現に付随する意味や言葉の持つ意味を徹底的に排除するために”偶然性”という概念を取り入れました。例えば、寸断された新聞記事を袋に入れ、無作為に取り出した言葉を並べる作詩法や色紙などの平面的な素材をランダムに配置するコラージュ、既製品や廃材を立体的に組み合わせるレディメイドという手法を用いています。
そして同じように、従来の”美”の価値観に対しても異を唱えました。伝統的な審美的(美を深く追求した)表現や芸術活動の高潔性(清らかさ)を軽視し、自己矛盾や使い捨て、非審美的なことや非倫理的なことなどを重視しました。これは、表面に現れる美しさよりも内在する観念の方が重要であると主張していると言えます。
これらの考え方は、後のシュルレアリスムやレトリスムといった芸術運動に大きな影響を与えました。
*レトリスム:言語の最小単位である文字まで既成の形式を破壊することで、言語を完全に解体し言語を介さないコミュニケーションを試みた文学的な芸術運動
主なアーティストと代表作
チューリッヒ
ニューヨーク
ケルン
マックス・エルンスト
*次回のシュルレアリスムの時に紹介します。
ハノーヴァー
ベルリン
*特に大戦による実害が大きかったベルリンでは、政治色の強い”スーパー・ダダ”という例外的特徴を持ったムーブメントが興りました。
ということで、いかがでしたでしょうか?
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次回予告
【やさしい美術史】第2弾 夢と幻想の世界『シュルレアリスム』
お楽しみに!
参考文献
『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(山本浩貴、中公新書)
『世界アート鑑賞図鑑』(スティーブン・ファージング、樺山紘一、東京書籍)